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わさび漬け
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「わさび漬け」
もうどの位前になるでしょう。
父親がとても好きな食べ物の中で、その味わいについて子供の私がまったく想像できなかったものだった数少ない食べ物のひとつがこのわさび漬けです。
「子どものお前にはまだ食べられないよ。」いつも優しく、食べ物だって何でも薦めてくれる父親からの思わぬひと言。
大人の食べ物。
そんな擦り込みがもう40年以上も前に行われた嗜好品。
だから何でしょうか、いつもわさび漬けを箸に少し載せては口に運ぶとき、その芳醇な香りが口腔鼻腔に広がるにつけ、「ああ、大人の歓び」と悦に入ってしまうのです。
大人になってその味わいを存分に楽しめる立場になった今では、このわさび漬けという嗜好品に対して自分は何を楽しんでいるのだろうと考えることがあります。皆様はどうでしょう?
ツンと鼻に抜ける、わさびでしか手に入らない、上品な公家様の右手で思い切りパンチされたような至福な刺激?それともシルクのベッドに横たわったような感覚にさえ陥る得も言われぬような酒粕の滑らかですべらかな味わい?はたまた、味覚としては全く正反対で異質なそのふたつの感覚が混然と同時に押し寄せる、意表をついた官能的とも言えるようなマリアージュ?
どれもですよねえ。どれもです。こんな味覚って他にあるんですかねえ?他にない。もしかしたら、単に辛い刺激があるから「お前にはまだ食べられないよ」と言っていたのではなく、「お前みたいな子供にはこの官能は早すぎる」。父親はそう言いたかったのかもしれない、とまで思えて来るのです。
この食べ物を前に最近の私の悩みを告白します。晩酌の肴として口に運ぶのか、はたまた存分に酌を楽しんだ翌朝のまだ寝ぼけ眼な舌に鋭敏な刺激を与えることで酔っ払いから常人に戻るプロセスにそれを愉しむのか。むーん、全然決められない自分。。いやしくもOTSUMAMIサイトですからね。晩酌の肴の方に軍配を挙げねばならないのでしょうけど。
うまいんだよなー、呑んだ翌朝の白米とわさび漬けっ。
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